自動車保険 豆知識(16)~動いていると過失は0にならない?

◆自動車事故発生! 少しでも動いていると自分の過失は0にならないのか?

1)「少しでも動いていれば双方に過失が生じる?」

2)「全く動いていなければ過失は0?」

3)事故の現場で相手が「自分が全部悪い!こちらが全部払う!」と言えばこちらの過失は0?

4)相手が怖かったので現場で「全部こちらが悪い」と一筆書いてしまった。こちらは100%の過失となる?

5)追突された場合は自分:相手=0:100だけど、上り坂でこちらが下がってぶつけた場合も、自分の後ろが接触しているから自分:相手=0:100になる?

 

最後の質問5)は論外、後ろがぶつかっていても自分が相手にぶつけているので自分:相手=100:0です。(逆突といわれる加害事故です)

その他のものはケース・バイ・ケースです。こちらが止まっていても危険な場所であれば過失が生じるケースもあります。

また、4)のような相手の圧に押されて一筆書いてしまった場合「事故直後の現場で正常な判断ができない中での錯誤」として効力の無効を主張できるケースもありますが、一筆書いた書面が一定の効力を持ち不利になってしまうこともあります。同様に3)の口約束の場合でも一定の効力を持つうえボイスレコーダーなどに録音されていた場合にはそれを証拠として不利な状況になってしまいます。

事故現場では安易に過失割合や責任の所在を約束してはいけません!

 

◆過失割合は誰が決める?

過失の割合は事故の当事者同士の思惑や力関係で決まるものであはありません!

相手が一方的に過失を認めたからと言ってこちらの過失が0になるとは限りません。相手に対して申し訳ない気持ちが強いからこちらで100%賠償したいと思ってもそれは無理です。

過失割合の交渉は、基本的には保険会社の事故担当者同士で行います。事故の形態によって基本的な過失割合というものが存在し、そのため加害者も被害者もほぼ平等な判断で過失が決められます。多くの保険会社の事故担当者が参照するのは「別冊 判例タイムズ」という民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準が掲載されている書籍です。ちなみに現在の最新版は全訂5版(税別5,000円・判例タイムズ社)となっています。

よく言われている「保険会社が大手で強いから過失で得する・・・」ということはありません。大手でも中小の保険会社でも過失の判断については平等に交渉されます。

 

◆保険会社が示した過失割合は絶対なのか?

保険会社同士で過失割合の交渉を行った結果で提示された過失割合については、絶対的なものではありません。事故時の状況が保険会社に十分伝わっていない場合や事故の場所を取り違えていた場合や、保険会社の事故担当者の思い違いがあった場合などは過失割合の判断が異なっているケースもあります。

納得できない場合には保険会社の事故担当者に申し出をしたり、代理店の担当者に相談したりして改めて交渉を行ってもらうようにしましょう。

どうしても納得のいく結果にならない場合には「弁護士費用特約」を使って弁護士に入ってもらう方法もあります。

ただし、「対人・対物」「人身傷害」「車両保険」の補償を付けた自動車保険にご契約されていれば、過失割合や支払金額に関係なくスムーズに解決できます。長引かせるよりは早めの解決を選択する方がよいと考えます。

多くの方が思い違いをしていますが、自分自身の過失割合や支払保険金の金額が増えると自分の自動車保険の割引がより悪化すると考えるのは間違いです。基本的には事故の件数によって割引等級が下がりそれに伴い割引が悪化し保険料が上がるようになります。1件の事故で「対物賠償」だけで解決した場合でも、「対物賠償」「対人賠償」「車両保険」を使った場合でも、事故の件数は1件なので割引等級はいずれも3等級ダウンとなります。

事故の場合は、まずは代理店に報告・相談をお願いします。

(文責:白井利典)