火災保険 豆知識(6)~お隣の火事で自宅が焼けた!

◆お隣からのもらい火で自宅が火事になった場合

火元となるお隣さんに損害賠償を請求することはできません。「失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)」という法律で「重大な過失がない失火には賠償責任はない」と定められています。本来、他人に損害を与えた場合は民法709条に基づき損害賠償責任を負いますが、失火責任法はこの規定を失火の場合に適用しないと定めています。

ここでいう「重大な過失」とは、故意に近い著しい注意欠如の状態を指します。例えば、以下のようなケースが過去の判例で重過失と判断されたことがあります。

 ・てんぷら油の入った鍋を火にかけたまま、長時間その場を離れる

 ・寝たばこの危険性を認識しながら、対策をせずに喫煙を続け火事を出す

 ・石油ストーブの火を消さずに給油し、こぼれた石油に引火させる

このように、極端な不注意(重大な過失)があった場合は損害賠償を問われる可能性があります。

◆逆に、自分が火元になった場合は?

同様に、重大な過失がない場合には法律上の損害賠償を負うことはありません。

◆では、もらい火での火事の損害は誰がどのように補償するのか?

ご自身の財産を守るために「火災保険」を契約して自己防衛することが必要となります。火災保険では、もらい火により生じた火災の損害はもちろん、消火作業に伴う放水で自宅が水浸しになってしまった場合も補償されます。この場合、建物だけの火災保険では家財や布団・衣類などの損害は補償されませんので、家財に対しても火災保険を契約する必要があります。

◆もらい火を受けたお隣さんを補償できる保険は無いの?

自分の家が火元となった火災で「いくら法律上で賠償責任は無いとはいっても、自宅を再築して住み続けるにはお隣さんとの関係が気まずくなってしまうので何とかしてお隣さんに補償をしたい。」という切実な思いには「類焼損害補償特約」という特約があります。多くの場合、支払限度額は1億円で設定されています(保険会社による)。

これは、失火責任法に関わらず、類焼させてしまった場合にお隣さんの損害を補償できるという特約です。この特約を付帯していれば安心ですね。

ただし、この特約はあくまで「足りない部分を補う補償」となっており、類焼を受けた家の火災保険を適用したうえで不足分を補うというものです。例えば、類焼を受けた建物の再築費用が2,000万円だとして、その家で契約している火災保険が1,500万円で契約しているものだとすれば、不足する500万円を類焼損害補償特約で支払います。

また、類焼前の建物と同等の建物について再建築価格が2,000万円であって、契約している火災保険が時価払いで経年劣化等により評価額が1,500万円、といった場合も該当します。

また、お隣が転居してきたばかりで火災保険の契約をまだしていない場合や火災保険の更新を忘れて無保険の場合などは、類焼損害補償特約でまるまる支払うこともあり得ます。

 

まずは、ご自身の大切な財産である家を守るために「建物」および「家財」の火災保険をしっかり契約しておくことが重要です。

(文責:白井利典)