火災保険 豆知識(4)~毎年建物の金額が高く設定される

◆満期更新の案内が来た! 建物の保険金額が高くなっている?

火災保険の満期案内が届いて、更新の見積もりを見てみると・・・。多くの方々は「えっ!? 建物の保険金額が高くなっている?」と驚かれることかと思います。別に、保険代理店が保険料を高く取ろうとして意図的に保険金額(補償の金額)を上げているのではありません。

火災保険において建物の保険金額については評価方法が2通りあります。

〔1〕年次別指数法建築時(または購入時)の建物価格(土地代は除く)を基準として、その後の物価や修理費用の情報に応じて定められる年次別指数を用いて現在の建物の価値(再建築した際の金額)を算出し保険金額とする方法。近年のエネルギーや原材料の価格、人件費の情報、インフレ等の影響で建物の再築に係る費用も上昇しています。年次別指数はこれらを勘案した指数となっています。

〔2〕新築費単価法建物の主要構造や面積を基準として、専有面積1㎡あたりの標準単価(新築費単価)をもとに評価を行う方法。中古取得した建物など、新築費用がわからない物件などに幅広く適用されている方法です。しかしながら、新築費単価は標準的な建物に対するものであり、「高級部材を使っている」とか「住宅用エレベーターを設置している」とか「太陽光パネルを設置している」からとか「特殊塗料を使っている」などといった実態により新築費単価は異なるため実態による調整が必要となります。こちらも、近年のエネルギーや原材料の価格、人件費の情報、インフレ等の影響で建物の再築に係る費用も上昇していますので、新築費単価はこれらを勘案した指数となっています。

「年次別指数」にしても「新築費単価」にしても徐々に上がってきていることで、評価される建物の保険金額が徐々に高くなっています。建物が年数を重ねて古くなっているのに、保険をかけるときだけ建物の価格を高く設定するのは納得できないという方も多くいらっしゃいます。しかし、万が一火災や竜巻で家が全損となった場合に建て替え費用が十分支払われないと再築が困難になります。このためしっかりと評価をして適切な金額で火災保険を契約することで家を守ることに繋がります。

 

◆基準の金額が上がる要因は?

ざっくりいうと「物価」が上がることで「再度同等の建物を今建築するためにかかる費用」も上がるからです。

「物価」の上昇には、円安などの影響により原油などのエネルギー価格が上がること、製造原価や輸入価格の上昇により原材料の価格が上がること、人手不足や最低賃金の上昇により建築工事に携わる方の人件費が上がること、これら複合的な理由により緩やかにインフレ状態になって全体的に価格があがっていることに繋がります。

 

◆建物の保険金額を下げれば保険料を下げられるのでは?

そう考える方もいらっしゃいます。しかし、安易に建物の評価額を下げて火災保険契約時の保険金額(補償の金額)を下げることは契約者の不利益に繋がります。

火災保険の大きな目的は、保険の対象(建物など)に損害が生じた場合にそれを損害発生直前の状態に復旧させることです。評価額は損害額算定の基礎であり、お客様に十分な保険金をお支払するには保険契約の際に適正な評価額および保険金額(補償の金額)を設定することが重要となります。

適正な評価額およびその評価額をもとにした保険金額(補償の金額)を設定しないと、万が一事故が発生した際に十分な保険金を受取れずに建物を再建築することが困難になります。

保険料を抑えたい、何とかならないのか・・・。といった場合には遠慮なく保険代理店/営業担当者に相談してみましょう。罹災時に困らないよう正しい保険契約の範囲内で最適なプランを提案してくれるはずです。

(文責:白井利典)