火災保険 豆知識(1)~火災保険は「火災」だけの補償ではない

◆火災保険は「水災」や「雹災」などでも対象となります

 火災保険という名前が保険の実態と合わなくなってきています。

補償範囲は

 「火災」「落雷」「破裂・爆発」「風災・雹災・雪災」「水濡れ」「水災」「盗難」「外部からの衝突」「その他汚損・破損」のほか、「個人賠償責任保険」「弁護士費用特約」「建物電気的・機械的事故」「類焼損害」「携行品損害」などがあり、賃貸物件の場合には「借家人賠償責任保険」が選べます。

 また、「太陽光発電利益」「住宅内サイバーリスク補償」、建物の大家さんの場合には「家賃収入特約」や「事故対応等可主費用特約」など新しい特約も増えてきて選択して付帯できます。保険会社によっては「傷害」の補償が特約で選べたりします。

 

◆火災保険は絶対に必要なのか?

 「うちはオール電化住宅で火を使わないから火災にはならないよ」という方もいらっしゃいますが・・・

 日本には「失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)」があり、簡単に言うと「出火元は賠償責任を問われない」ということです。つまりは、お隣(A)が火の不始末で火事になり、自分の家(B)に火が移ってしまい燃えてしまったとしてもお隣(A)の出火原因に重大な過失が認められない限り(A)には(B)に対する類焼の責任を負わせることはできないということなのです。他人の財産に損害を与えることは民法709条に定められている「不法行為」にあたるものですが、この失火責任法が民法よりも優先適用されます。

 日本は古くから木造建築物が多く市街地(特に旧市街)では木造住宅が密集しているため、一度の火災により多くの住宅や建物が被害を受けてしまいます。このため火災における類焼や延焼による損害が大きく発生します。失火を民法の不法行為に含めると、類焼や延焼で被害を受けた多くの住宅や建物に対して莫大な損害賠償を負わなければならなくなるため、それを抑止するための特則として位置付けられています。

 また、お隣の火が移るだけでなく「飛び火」による損害も知られています。2016年12月の新潟県糸魚川市の大規模火災では飛び火(最大数百m)により延焼が広範囲に短時間で広がったことは多くの方が知っていることと存じます。

 このため「自分の家は自分で守る」必要があり、大切な財産であるご自宅の建物を復旧できるようにご自身で火災保険を契約する必要があるのです。

 

◆自然災害の損害が増えている

 火災保険の支払件数や支払金額は横ばいから微減傾向にあります。これは、耐火建築やオール電化住宅などが増えてきたことや消防技術が年々高まっていることなどが要因となっています。

 近年では集中豪雨・線状降水帯・巨大台風などが増えていることと、それらを原因とする河川の増水などによる洪水(外水氾濫・内水氾濫)での事故件数や支払金額が増えています。また、長期間の降雨により山の斜面が崩れて土砂崩れにより住宅や建物が損害を受ける事案(2014年の広島、2021年の熱海伊豆など)も増えています。

 また、異常寒波による大雪、広範囲にわたる降雹なども損害が増えています。特に降雹(雹災)については、車両の損害や建物の損害などを合算すると一度の降雹災害で支払われる保険金が大型台風一回の災害で支払われる保険金に匹敵するほどだと言われています。

 そして、これらの自然災害による損害が保険会社の想定を超えて発生すると翌年に保険料の改定や補償内容の見直し(多くは縮小)が行われます。火災保険が年々高くなっている主な要因がこれなのです。長期契約ができなくなってきているのも同じ要因で、長期の損害予想が困難になっているためです。

 

◆従来の「火災」を中心とした補償から「住宅という財産を守る」ための補償に

 このように、古くからの「火災」による損害を中心にした補償から、住宅の損害に関する様々なリスクに対応できるように様々な補償内容・特約などが増えてきています。

 当然ながら全部の補償を最大限契約すると保険料は高くなります。ご自宅の住宅事情(建築年・建物構造・立地条件・使用状況など)を勘案して必要な補償を選んで契約することが重要です。

(文責:白井利典)