火災保険 豆知識(3)~「新価」と「時価」、時価額だと貰える金額が少ない?
◆新価(再調達価額)と時価
「新価」とは、同等のものを新たに建築あるいは購入する(再調達する)のに必要な金額を指します。
「時価」とは、新価から「経過年数による価値の減少と使用による消耗分」を差し引いた金額を指します。建物や家財などの現在の価値といえます。自動車でいえば中古車価格みたいなものです。
証券記載の「保険金額」は保険契約の際に設定する契約金額で、事故が発生した場合に保険会社が支払う「損害保険金」の限度額を指します。
「損害保険金」は事故により損害が生じた場合に保険会社が支払う金銭を指します。
実は、20年以上前の火災保険は「時価」で契約するのが一般的でした。
しかし、時価契約には大きな問題点がありました。例えば、3,000万円で建てた家が20年後に全焼してしまった場合、時価額で評価されると経年劣化分が差し引かれ、1,500万円程度の保険金しか支払われない・・・といったケースが発生したのです。これでは、家を元通りに再建することはできません。
このような事態を防ぎ、お客様が万一の際に経済的に困窮することなく生活を再建できるよう、現在では「新価」で契約し、損害額も「新価」を基準に支払われる火災保険が主流となっています。
◆新価(再調達価額)の決め方は?
大きく2通りあります。1つはシンプルに「建築時の建物の金額」に建築時から現在までの物価等を反映した指数(年次別指数)を掛け合わせて算出する方法。もう1つは中古で購入して建築時の金額や建築年月が正確に把握できない場合に、建物の延床面積に建物の構造別(木造/鉄骨/コンクリートなど)の単価を掛け合わせて算出する方法(新築費単価法)があります。
どちらも、算出された「新価(再調達価額)」を保険会社が建物の現在価値として承認(協定)してその金額を補償するものです。正しく算出された「新価(再調達価額)」をもとに修理費用や全損時の損害額を支払います。
ちなみに、新築費単価法は建設費や材料費等を含めて物価上昇により基準となる金額が毎年見直しされていますので、火災保険を満期更新する場合には評価された「新価(再調達価額)」が前年契約(更新前契約)と異なることがほとんどです。「年次別指数」でも「新築費単価法」でも、多くの場合は金額が上がっていますので「建築してから年数が経っているのに価格が上がるのがおかしい」と感じる方も多くいらっしゃいますが、同等の建物を再建築する際には現在の物価に合わせた費用がかかります。
十分な金額で補償を受けるためにも「時価」と「新価」を知っておくことは大事です。
◆どっちが得なの?
新価(再調達価額)の方が、修理や再建築の際に原状復帰できる金額と近い金額が補償されるので安心です。最近の火災保険はほとんどが新価(再調達価額)での契約となっていますのでご安心を。
(文責:白井利典)
